効率的な営業活動を行うために欠かせないのが顧客管理です。顧客管理データを活用することで適切なアプローチが実現できるでしょう。そのためには自社に合ったツール選びが大切です。
そこで本記事ではツールの紹介とツール選びのポイントを紹介します。具体的な導入のイメージが掴めるため、ぜひ参考にしてください。
顧客管理とは?営業への活用に注目が集まる背景と果たす役割
顧客管理とは、顧客情報だけでなく顧客との関係を管理することをいいます。具体的には、顧客情報だけでなく購買履歴、マーケティング活動の反応、サポートの状況、訪問時の状況などさまざまな情報を記録するなどといった活動全般を指します。
競争が激化している昨今では、これら自社独自のデータを営業に活用する動きに注目が集まっているため、顧客管理の重要性が増してきているのです。
注目が集まる背景には顧客のニーズの変化とデータ活用の進化がある
SNSやインターネットの普及で情報が手に入りやすくなった現代では、従来の営業手法が通用しなくなりつつあります。実際に、飛び込み営業や電話営業などといった営業手法だけでは成約率に限界がきており、さらに営業人員の確保も難しくなってきています。
また、新製品や新サービスをリリースしても同業他社の後追いが激しくなってきていることで、自社の独自性や優位性を発揮しにくくなっていることも現代の特徴です。
こうした時代背景の中で、これまで蓄積してきた自社独自の顧客情報を活用していく手段として顧客管理に注目が集まっています。
営業活動の中で顧客管理が果たす重要な4つの役割
営業活動の中で顧客管理が果たす重要な役割は、以下の4つです。
- 顧客のニーズをつかむ
- 過去データから新たな顧客獲得への道を見つける
- 顧客との信頼関係を構築する
- 経営にまつわる多くの情報を取得する
1.顧客のニーズをつかむ
営業活動において、顧客の過去の購買行動を分析してニーズをつかむことはとても重要な要素の1つです。このときに、顧客管理が大切な役割を果たします。
顧客が「今欲しいもの」「今不自由を感じていること」などの要求を企業側が適切に捉えて解決できれば、商品は売れるでしょう。
とはいえ、企業が顧客に対して毎回アンケートをとったとしても、顧客から明確な回答が得られるとは限りません。顧客管理にて収集しているデータなどから、どのようなニーズがあるのかを探ることが重要だといえるでしょう。
2.過去データから新たな顧客獲得への道を見つける
適切な顧客管理を行っていれば、蓄積されたデータを活用して顧客のニーズや性質を分類することが可能です。そのため、セグメント内容が似ているほかの見込み客に提案するなど、効率のよい営業活動が実現できます。
分類したセグメントごとの行動パターンや顧客のニーズに適したサービスの提供で、購入金額を上げたり、競争優位性を高めたり、顧客と長期的な関係を構築したりすることに役立つでしょう。
過去データの活用は、生産性・効率性を上げるために必須項目だといえます。
3.顧客との信頼関係を構築する
顧客との信頼関係の構築にも、顧客管理は大きな役割を果たします。信頼関係を構築するためには、顧客に自社のファンになってもらうことが大切です。
このときに、企業側が顧客にメルマガなどを一方的に送るだけでは、顧客と良好な関係は築けません。そのため、顧客と良好なコミュニケーションをとり、リピーターを増やすことが求められます。
顧客管理を適切に行うことで、顧客とのコミュニケーションが円滑になり、ひいては多くのファンの獲得につながることでしょう。
4.経営にまつわる多くの情報を取得する
顧客管理は、経営にまつわる多くの情報取得にも重要な役割を果たします。蓄積した顧客データの分析によって、営業の効率化が図れるだけではなく顧客管理を通じた売上状況の予測から経営に関する多くの情報を取得可能です。
受注できた実績だけではなく、受注できなかったデータも含めて分析することで、サービスや製品の改善にもつながります。より顧客のニーズに合ったサービスを提供できるようになるでしょう。
また、顧客管理によって将来の売上の見込みを予測することも可能です。それによって先を見越した経営判断ができるようになり、経営資源への投資活動がよりスムーズになるでしょう。
つまり、顧客管理によって多くの情報を取得することで、安定した経営が可能となるのです。
顧客管理で把握するべき項目
顧客管理で把握するべき項目は、以下の4項目です。
- 属性に関する情報
- これまでの取引履歴および購買履歴
- 収益性にまつわる情報
- その他顧客との信頼関係に関する情報
属性に関する情報
まずは属性に関する情報は外せません。具体的には以下の通りです。
- 企業情報
- 顧客窓口の情報
- 決裁ルートなど営業方針の参考となる情報
企業情報は、顧客の企業名や本店・支店などの所在地、業績情報や資本金、従業員数などです。顧客の企業ホームページやパンフレットなどの資料をもとに、把握できる範囲でまとめるとよいでしょう。
顧客窓口の情報は、顧客の担当者の氏名や部署名、役職、電話番号、メールアドレス、そのほかにも特筆すべき情報があればまとめておきましょう。
決裁ルートや営業方針の参考となる情報も重要です。情報収集が可能であれば担当者の上司や部門長といった決裁権者の氏名や趣味・趣向もまとめておくと、アプローチの際に役立つことでしょう。
これまでの取引履歴および購買履歴
過去の取引や購買履歴も把握すべき要素の1つです。これらを詳細に残すことで顧客と最適なコミュニケーションが図れるためです。
具体的には、商談内容やその履歴、Webサイトのアクセス履歴、メールや問い合わせの履歴などです。また、各情報の日時もセットで記録しておくと、顧客にアポイントを取るときの参考にできる場合があります。
例えば、顧客の担当者といつも月初に商談しているのであれば、月末よりも月初のほうがアポイントを取りやすいといった具合です。
このように、顧客管理を活用し自社の営業パーソンが独自で抱えていた情報が可視化されることは、営業活動を仕組み化する際にとても重要な情報となり得るでしょう。
収益性にまつわる情報
収益性にまつわる情報も顧客情報で把握すべき項目の1つです。商品の累計売上などを記録することで営業活動の効率化につながります。
顧客と取引した累計売上以外にも、累計利益や平均単価、平均の取引頻度など、収益につながった情報を記録しておくとよいでしょう。
これにより優良顧客の判別がつき、どの顧客と優先的に取引するとよいかが分かるため、営業効率の改善につながります。
なお、これらの情報の活用は営業予算や売上見込みの予測にも役立つため、とても重要な項目の1つであるといえるでしょう。
その他顧客との信頼関係に関する情報
ここまでの基本情報以外に、顧客との信頼関係に関する情報も把握しておくとよいでしょう。クレームやトラブルの記録、顧客の要望と対応履歴、会話情報を記録しておくことで商談の質の向上につながります。
クレーム・トラブルは、一度解決したとしても、また同じことが繰り返されれば顧客からの信用を大きく損ないます。場合によっては取引を終了されるなどの問題につながるため、注意が必要です。
そのため、クレームやトラブルの大小を問わず、発生した時期や内容を詳細に記録しておき、同じことを繰り返さないような体制を整えることが大切です。この積み重ねによって顧客から再度信頼してもらえる可能性も高まるでしょう。
また、顧客からの依頼ごとにどのような対応を取ったかなどを詳細に記録することで、営業担当者ではなくても迅速な対応が可能となる場合があります。そのため、対応状況、対応日、顧客名、できごとなどを日常的に記録しておくことが大切です。
営業に活用できる顧客管理ツール5つを徹底比較
営業に活用できる顧客管理ツールを徹底比較します。
顧客管理ツール別メリット・デメリット | ||
---|---|---|
ツール | メリット | デメリット |
Excel | 初期費用がかからない 使い慣れている人が多い |
入力作業が多い データ同士が紐づかない |
スプレッドシート | 扱いやすい コストがかからない |
セキュリティ面が不安 顧客管理シート作成が手間 |
CRM | 顧客情報を一元管理できる カテゴリーを絞った営業ができる |
コストが高い場合がある 運用開始までに時間がかかる |
SFA | 情報共有が可能である Excelほど登録作業が多くない 登録情報同士が自動的に結びつく |
コストが高い場合がある 運用開始までに時間がかかる |
MA | 自動でメール配信が可能 業務効率が飛躍的に高まる |
メール配信設定が手間 継続的に利用料がかかる |
以下、それぞれのツールについて詳細を解説します。
ツール1.Excel
顧客管理にExcelを活用するメリットとデメリットは以下の通りです。
Excelで顧客管理を行うメリット
Excelで顧客管理を行うメリットは、以下の通りです。
- 初期費用がかからない
- 使い慣れている人なら新たに使い方を学ぶ必要がない
Excelは、仕事に使うパソコンには必ずといってもよいほどインストールされているでしょう。そのため、顧客管理にExcelを使用するのであれば、新たなコストをかけずに仕組みをつくることができるのがメリットの1つです。
またパソコンを使用する人であれば、知らない人はいないというほど世の中に定着しています。そのため、新たに使い方を一から学ぶ必要がないのもExcelを活用する利点だといえるでしょう。
顧客管理にExcelを使用する際は、以下の項目を作成するとよいでしょう。
- 企業情報
- 企業の担当者情報
- 案件情報
- 行動管理
この他にも、自社で管理したい項目を増やしていくことで、より細かい顧客管理が可能となります。
Excelで顧客管理を行うデメリット
Excelで顧客管理を行うデメリットは、以下の通りです。
- データ同士が紐づかない
- 見たいデータにたどり着くのに時間がかかる
- 入力作業が多い
Excelではデータ同士の紐づけができないため、何度も同じ内容を入力する必要があります。また、データのカテゴリー分けができないため、見たい情報にたどり着くのに余計な時間がかかる点が難点です。
入力作業も多いことから、情報の更新に逐一手間がかかる点も注意が必要です。顧客管理ツールの中でもアナログさが拭えないツールだといえます。
ツール2. スプレッドシート
顧客管理にスプレッドシートを活用するメリットとデメリットは以下の通りです。
スプレッドシートで顧客管理を行うメリット
スプレッドシートで顧客管理を行うメリットは、以下の通りです。
- コストがかからない
- 複数人で情報共有しやすい
- Excelと似ているため扱いやすい
スプレッドシートは、Googleアカウントがあれば誰でも無料で利用できます。また、クラウドツールになるため同じシートを複数人で共有したり更新したりできるのもメリットです。そして操作方法がExcelとよく似ているため、扱いやすいのも特徴の1つです。
スプレッドシートで顧客管理を行うデメリット
スプレッドシートで顧客管理を行うデメリットは、以下の通りです。
- 情報漏えいのリスクがある
- 顧客管理シートを作成する手間がかかる
- 他のツールとの共有がしづらい
スプレッドシートのデータは、転送するときや保管するときに暗号化されることからセキュリティ面はクリアしています。ただ、専門的なツールほどのセキュリティ性はないことが弱点です。Excelと同様、顧客管理シートを自作する手間もかかります。さらに他のツールとの共有がしづらいため、情報の一元化には不向きだといえます。
ツール3.CRM
CRMとは、カスタマーリレーションシップマネジメントの略語で、顧客管理の専門ツールのことをいいます。Excelの顧客管理のデメリット部分を解消したものですので、操作性に優れます。
以下、CRMで顧客管理を行うメリット、デメリットを詳しく解説します。
CRMで顧客管理を行うメリット
CRMを使う最大のメリットは、顧客情報を一元管理できる点にあります。部門や社内全体で情報を共有できるため、管理効率が高いです。これまで属人化していた情報が一元化されることにより、顧客情報を横展開して営業戦略の幅を広げることもできるでしょう。
また、顧客の属性登録が可能なため、カテゴリー分けができます。その属性やカテゴリーに合わせた宣伝活動も可能です。例えば、関西在住の顧客のみに企画情報を配信するなど、マーケットを絞った営業活動もCRMの活用で実現できるでしょう。
CRMで顧客管理を行うデメリット
CRMでは、保有している顧客情報を一旦全て入力する必要があります。そのため導入から運用開始までにタイムラグが生じます。
また、運用に慣れるまでの時間もかかります。正しい使い方を覚えなければ有効活用できない上に、関係者が継続的に使えるような仕組みも整える必要があるでしょう。導入失敗に終わらないための工夫が大切です。
さらに、導入するCRMによっては高額の初期費用がかかるため、予算との兼ね合いも考える必要があるでしょう。
CRMはさまざまな製品があるため、どのツールが自社に適しているかをしっかりと見極めることが大切です。
ツール4.SFA
SFAとは、営業活動を確認するための顧客管理ツールのことで、セールス・フォース・オートメーションといわれています。メンバーの業務管理を細かく行い、業務効率化を図りたいといった際に役立つ顧客管理ツールです。
SFAで顧客管理を行うメリット
SFAで顧客管理を行うメリットは以下の通りです。
- Excelほど登録作業が多くない
- メンバー同士での情報共有が可能なこと
- 登録された情報同士が自動的に紐づく仕組みになっていること
SFAはExcelほど登録作業が多くないため、常に入力作業に追われるといった懸念は避けられるでしょう。また、SFAの中でコメントを残す機能なども備わっているため、メンバー同士の情報共有やコミュニケーションが円滑になるのもメリットの1つです。
さらにSFAでは登録された情報同士が自動的に紐づく仕組みになっています。案件情報に企業情報をつなげたり企業情報と担当者情報をつなげたりなど、項目ごとの登録内容が自動的につながっていくため、運用効率が高いツールだといえるでしょう。
SFAで顧客管理を行うデメリット
SFAもCRMと同様に、導入してから運用を開始するまでに時間がかかります。使用方法を覚える必要があることもデメリットの1つです。
また、SFAも導入する製品によっては大きな初期費用がかかります。こちらも予算との兼ね合いを考える必要があるでしょう。
ツール5.MA
MAとは、マーケティング施策に関わる業務を自動化して効率化する仕組みを意味します。以下、メリットとデメリットを解説します。
MAで顧客管理を行うメリット
MAで顧客管理を行う最大のメリットは、顧客の属性や興味の度合い、行動記録などから自動で情報配信できることです。
これによって、メールを毎回手動で送信しなくてもすむことからマーケティング活動の業務効率改善が見込めます。
適切に運用できれば自社の強力な武器となり得ることでしょう。もちろんデータの一元管理も可能なツールです。
MAで顧客管理を行うデメリット
MAはメールを自動配信できるメリットがある反面、マーケティング施策の中身は自社で制作する必要があります。
顧客の行動パターンに応じて、どういう情報を配信するかを決めるところまでは自社の仕事です。また、新たな企画の制作も自社対応となります。そのため、仕組み化するまでに工数がかかることは避けられません。
また、MAは継続的に利用料金がかかるため、常に費用対効果を意識しておく必要があるでしょう。
営業で活用するための顧客管理ツール選びのポイント
営業で活用するための顧客管理ツール選びのポイントは、以下の3つです。
- 扱いやすいツールであるか
- 目的に沿った機能が備わっているか
- コスト面は適正であるか
扱いやすいツールであるか
1つ目のポイントは、扱いやすいツールであるかという点です。いざ顧客管理ツールを導入しても、使われなければ意味がありません。
導入したツールが扱いにくいと、
- 入力ミスが多発する
- 営業パーソンに使われない
- 使いこなせる人が限定される
このような初歩的なミスマッチが起きてしまいます。そのため、実際に使う人の立場を想定して扱いやすいツールかどうかを確認することが大切だといえるでしょう。
目的に沿った機能が備わっているか
2つ目のポイントは、目的に沿った機能が備わっているかという点です。顧客管理ツールといっても搭載されている機能はさまざまになるため、自社の課題や目的に合った機能の選択が必須だといえるでしょう。
想定と違った、といった失敗を防ぐためにも導入前にテストできるツールを選ぶことをおすすめします。
コスト面は適正であるか
3つ目のポイントは、コスト面は適正であるかという点です。顧客管理ツールは決して高ければいい、安ければいいというものではありません。多機能のツールがいいだろうとの判断で高額のツールを導入しても、運用してみたら意外と必要ない機能が多かった、という事例もあるほどです。
導入検討する際は、売上改善や業務効率化などのメリットがコストを上回るか、しっかりとシミュレーションをしておきましょう。
ツール選びのポイントをもっと詳しく知りたい場合は、以下の記事をご覧ください。
営業支援サービスとは?おすすめツールや支援サービスの詳細を比較
CRM・SFA・MA導入での課題
顧客管理に「CRM・SFA・MA」を導入するにあたり、ここまで解説してきたこと以外にも重要な課題があります。それは、導入する側とベンダー双方に営業プロセス設計のノウハウや経験がない場合です。
例えば、以下のようなケースが挙げられます。
- 自社の営業ノウハウが属人化していて標準化されていない
- 導入側とベンダー側で導入目的が一致していない、本質的ではない
このような状態でツールを導入しても、ツールを適切に使いこなせずに終わってしまう場合もあり得ます。
こうした課題をクリアにし、自社の生産性を高めるためには「営業支援システム」の導入がおすすめです。営業支援システムとは、営業コンサルのプロである株式会社ヴェリサイトが提供しているサービスです。
目標、ニーズ、フェーズ、課題に合わせて事前準備から営業プロセス設計、構築から運用・定着化まで一気通貫で支援しています。
営業部門、間接部門、マネージャー、経営層の視点で情報の活用とボトルネックを意識した設計、構築を実施してくれるため、一度相談してみるとよいでしょう。
まとめ
ここまで顧客管理の重要性、ツールの紹介、ツールを活用するポイントについて解説してきました。顧客管理が今後の営業活動、ひいては経営活動にとっていかに重要かということをお分かりいただけたかと思います。
とはいえ、自社で円滑な顧客管理をするためのリソースが不足している、もしくは顧客管理を通じてより効果的なマーケティング活動を実現したいといった場合は、株式会社ヴェリサイトの営業支援システムを活用することをおすすめします。