エンタープライズ営業に取り組んでいる企業が増えています。しかしながら、「何を足がかりに大企業に対してコンタクトを取ればよいのかわからない」「うまく進めることができない」と悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
この記事を読めば、エンタープライズ営業を成功させるコツがわかります。KPI設定のやり方や必要なスキルを理解し、エンタープライズ営業を成功させましょう。
エンタープライズ営業とは?
エンタープライズ営業とは、大企業や官公庁などをターゲットにした営業手法です。
大企業や官公庁などの公的機関は規模が大きく、リードタイムが長いですが、その分成功すると大きな売上を獲得できます。
ただし、日本にある大企業の数は全体の0.3%で、数にすると約1.1万社です。数が限られているため競合他社も多く、競争の激しい分野です。
そのため、大企業と契約を結ぶには、あらかじめ戦略を立てた営業手法を考えることが重要といえます。
参考:中小企業白書2021年版
エンタープライズ営業の特徴
エンタープライズ営業を成功させるには、特徴を理解しておきましょう。
主な特徴は以下の通りです。
- リード数が少ない
- リードタイムが長い
- 売上が大きく、安定している
- ライバル企業が多い
- 契約までに関わる人数が多い
- 顧客に合わせたカスタマイズが必要
1つずつ詳しくお伝えします。
リード数が少ない
日本の大企業の数は、全体のわずか0.3%しかないため、元々のリード数が限られています。
また、大企業にはテレアポやDMが日々届き、担当者には常に多くの情報が自動的に入ってきます。
そのため、担当者は自分で情報を探す必要がなく、リードとしての獲得が難しいのです。
加えて、大企業は新規の売り込み営業を断っているケースも多く、リード数は更に少なくなっているといえるでしょう。
リードタイムが長い
リードタイムが長いこともエンタープライズ営業の特徴です。
大企業は、多くの顧客をかかえてるため、契約によって顧客に与える影響を社内で慎重に精査する必要があるためです。
また、社内に経営企画や法務、総務などのさまざま部署が存在し、契約にはいくつもの部署の承認を通す手続きも発生します。
そのため、エンタープライズ営業を成功させるには、この期間を粘り強く対応する忍耐力が必要でしょう。
売上が大きく、安定している
大企業との契約は、解約される可能性が低く、売上が大きく安定しています。
なぜなら、大企業にとっては解約にも大きな工数がかかるためです。
契約したときと同様に、顧客への影響を慎重に精査した上、社内での稟議を通すのも大変な手間がかかり、解約にも慎重にならざるを得ません。
エンタープライズ営業は、契約を獲得すると大きな売上と安定した関係が期待できるといえるでしょう。
ライバル企業が多い
エンタープライズ営業には、ライバル企業が多い傾向にあります。
特に、競争が激しい市場や業界では、数多くの企業が大企業とのビジネスを獲得しようと競い合っています。
たとえば、クラウドコンピューティングの分野では、AmazonのAWS、MicrosoftのAzure、GoogleのGoogle Cloudなど世界最大のテクノロジー企業が挙げられます。
これらの企業は、自社のクラウドサービスが最も信頼性が高く、コスト効率がよく、広範囲なサービスを提供していると主張し、大企業のクラウドビジネスを獲得しようと競争しています。
エンタープライズ営業は、たくさんのライバル企業が日々競い合っている分野です。
契約までに関わる人数が多い
大企業には多くの部署が存在します。1人が持つ決済権は限られており、役割が何人かに分けられていることが多いでしょう。
そのため、契約を結ぶまでには、関係する何人もの人に自社製品の説明をし、納得してもらわなければいけません。担当者が部署をまたがる場合は、1から信頼関係の構築が必要になる場合もあります。
顧客に合わせたカスタマイズが必要
エンタープライズ営業は、顧客に合わせた自社製品のカスタマイズが必要になることが多くあります。
大企業には長年培ってきた企業独自の社内ルールがあるため、新規契約により今までの方法を変更することは難しいでしょう。
たとえば、新しいサービスを導入したことにより、今使っているツールとの不具合が発生する可能性があると、大きなリスクを追うことになります。
そのため、エンタープライズ営業は企業に合わせて、自社製品のサービスをカスタマイズする必要があります。
エンタープライズ営業のKPI設定の注意点
中小企業向けと大企業向けのKPI設定は、異なる点が多いため設定には注意が必要です。
KPI設定とは、組織の目標を達成するために必要なプロセスを途中評価指標で表す数値です。
そのため、エンタープライズ営業のKPI設定をする際は、以下の点について注意しましょう。
- KPIに架電数を設定しない
- KPIに有望営業機会数を設定する
それぞれについて、詳しくお伝えします。
KPIに架電数を設定しない
エンタープライズ営業のKPI設定は、架電数を設定しないことが一般的です。
なぜなら大企業のほとんどの場合、テレアポは断られるケースが多いためです。また、もともとリード数が少なく、KPIとして設定するほど架電はできません。
エンタープライズ営業は、大企業との人脈をつくることから始まります。そのために必要なプロセスを計画して、KPI設定をしましょう。
目標設定は、具体的に「相手組織の相関図を作成する」「キーパーソンと商談の場を設ける」などがよいです。
上記のような内容を目標として設定すれば、エンタープライズ営業に必要なプロセスが社内でも共有でき、通常の営業と異なる点を理解できるでしょう。
KPIに有望営業機会数を設定する
有望営業機会数とは、見込み客の中で実際に契約につながった数を指します。
数値には、営業活動や商談中に失注したケースは含まれません。
つまり、商談や営業活動を通じて実際に取引が成立した件数を指します。ただし、失注したケースは含まれず、成功した営業活動の結果だけがカウントされます。
有望営業機会数は、現実的な目標や数値を設定しましょう。
前述したように、エンタープライズ営業はリード数が少なく、中小企業とは戦略プロセスが異なります。そのため、自社の現状に合った目標を設定しないと、営業パーソンのモチベーションも保てません。
有望営業機会数を正しく設定すれば、目標達成までの中間プロセスを確認できます。そして目標達成までに何が足りなく、これから何をすべきなのかを考えることが可能です。KPI設定の特徴を上手に活用しましょう。
エンタープライズ営業に求められる4つのスキル
エンタープライズ営業は、リード数が少ない上、競合他社とも奪い合いになるため、難易度が高い営業といえます。
成約につながるまでのリードタイムも長く、顧客に合わせたカスタマイズも必要です。
エンタープライズ営業に求められる4つのスキルは以下の通りです。
- コミュニケーション力
- 交渉力
- 情報収集力
- 計画立案力
1つずつお伝えしていきます。
1.コミュニケーション力
1つ目のスキルはコミュニケーション力です。
コミュニケーション力はエンタープライズ営業だけでなく、どんな営業にも必要なスキルです。
営業パーソンにコミュニケーション力がないと、どんなによい製品やサービスを提案しても相手には伝わりません。
エンタープライズ営業は、1つの企業に対してさまざまな人と関わる必要があります。相手によって話し方や内容も変える必要があるでしょう。
そのため、どのような相手にも対応できる円滑なコミュニケーション力が求められます。
2.交渉力
2つ目は交渉力です。
エンタープライズ営業は、競合が多く、たくさんの企業が営業をかけています。
契約を勝ち取るには、競合よりも先に商談を進める交渉力が必要です。ただし、大企業は取り引き先も多く多忙なため、相手の状況も考えながら交渉を進めなければいけません。
また、契約を獲得するために相手の言いなりに承諾してしまうと、のちのちトラブルにつながる可能性もあります。
相手の要望を聞きつつも必要なことは提案をし、交渉を進めなくてはいけません。
交渉力が高いと自社に有利な契約を進められるため、エンタープライズ営業には必要不可欠なスキルといえるでしょう。
3.情報収集力
必要なスキル3つ目は、情報収集力です。
エンタープライズ営業では、競合よりもレベルの高いアプローチが必要です。そのためターゲット企業の情報をさまざまな面から知っておく必要があります。
情報収集には、相手のニーズを満たす競合に負けない情報量が必要であり、ただホームページを見るだけでは不十分です。
主に以下の点について情報収集をしておくと、効果的なアプローチが期待できるでしょう。
- 商品やサービスの詳細
- 資産
- 課題とニーズ
- 決済権をもつ人や決済までのプロセス
ターゲット企業の商品やサービスを利用する人は、どのような人なのかも調べておきましょう。ターゲット企業の社員と同等レベルの情報収集ができれば、相手との信頼関係構築にもつながります。
4.計画立案力
4つ目に必要なスキルは計画立案力です。
リードタイムが長いという特徴があるエンタープライズ営業では、1度の商談で契約につながるケースは少ないでしょう。
担当者だけでなく、他部署や役員へのプレゼンテーションが必要になる場合もあります。
そのためターゲット企業の決済プロセスを事前に理解した上で、営業活動計画を立てることが必要です。プロセスを理解せず計画しても、途中で自社のリソースが不足し、商談が成立しないまま、話しが頓挫してしまう可能性もあります。
エンタープライズ営業を成功に導く4つの方法
エンタープライズ営業には、少し工夫が必要です。やみくもに汗を流しても成果を出すことは難しいでしょう。
事前にしっかりと戦略を立てて提案にのぞむことが大切です。
エンタープライズ営業を成功に導くためには、以下4つの方法があります。
- ABMの活用
- 接点をつくる
- 相関図を把握する
- キーマンと信頼関係を築く
それぞれについて、解説をします。
1.ABMの活用
ABMはAccount Based Marketingの略です。
特定の企業にターゲットを設定し、ターゲットの売上を最大化するために最適なアプローチを行うマーケティング手法の1つです。
エンタープライズ営業は、特定の企業に的を絞って営業を行うためABMの活用は最適といえるでしょう。
ABMの実践はターゲット企業を絞り、ターゲットのかかえている課題やニーズに対して、自社の製品やサービスがどのように解決できるかを伝えるアプローチから始まります。
ABMの活用でターゲット企業に絞った最適なアプローチ方法が設定でき、効率的に成果を出すことが期待できるでしょう。
2.接点をつくる
エンタープライズ営業では、まずターゲット企業との接点をつくる方法を考えましょう。
大企業は決裁者へ飛び込みやテレアポをしても、最初の段階で断られるケースが多く、いろいろな手法を試すことが重要です。
方法としては、「SNS」「イベントやセミナーへの参加」「知人やクライアントからの紹介」などがあります。
接点を持てるまで、さまざまな方法でトライする心構えが必要です。
何らかの接点から、情報や人脈ができればエンタープライズ営業が一歩進んだといえます。
3.相関図を把握する
ターゲット企業の相関図を把握しましょう。
大企業にはいくつもの部署があるため、エンタープライズ営業ではさまざまな部署の人と関わる機会が多くあります。
決裁権のある人と、実際に利用する人は違う部署の可能性もあるでしょう。
関わる部署や人数が多くなると、次のアクションを誰と進めたらよいか分からなくなることも発生します。
そこで、部署のキーマンを含めた相関図を把握しておけば混乱を防げるでしょう。
また、エンタープライズ営業が1つの部署で契約が成立したのちは、他部署にも導入してもらえるようにターゲットを広げていくことも必要です。
相関図を把握しておけば、他部署への提案もスムーズに行えるでしょう。
4.キーマンと信頼関係を築く
キーマンを見つけて信頼関係を築きましょう。
ターゲット企業との接点が持てたら、まずはキーマンを見付けましょう。
キーマンとは以下のような人です。
- 自社のサービスを求めている人
- 決裁権のある人、もしくは決裁権のある人から信頼されている人
このような人と信頼関係を構築し、自社のサービスを導入したいと思ってもらえればキーマンが自分の代わりに、社内で営業活動をしてくれるでしょう。
自分が営業活動をするよりも、キーマンにつないでもらう方が信頼性があり契約が獲得しやすくなります。
キーマンとの信頼関係は、エンタープライズ営業を成功に導く1つの鍵ともいえるでしょう。
エンタープライズ営業におすすめの本を3冊厳選
エンタープライズ営業で壁にぶつかったときに読む、おすすめの本を3冊紹介します。
- 大型商談を成約に導く「SPIN」営業術
- 最強の営業戦略 企業成長をドライブするマーケティング理論と実践の仕掛け
- 人を動かす
エンタープライズ営業だけでなく、社会人として働く人に役立つ本でもあります。
ぜひ、読んでみてください。
1.大型商談を成約に導く「SPIN」営業術
「大型商談を成約に導く「SPIN」営業術」は、著者自らが12年間で数百人の営業マンへのヒアリングと、約3,500件の調査にもとづいて書かれた本です。
契約が成立する手法や、不成立に終わるケースを科学的に仮説検証を繰り返して、つくりあげたメソッドが書かれています。
「SPIN 」とは、商談を成功に導く4つの質問法です。「商談とは何か」「商談を成功に導くSPIN営業術とは何か」「SPIN実践のために何をしたらよいか」が分かります。
著者 | ニール・ラッカム |
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出版年 | 2009年 |
対象読者 |
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2.最強の営業戦略 企業成長をドライブするマーケティング理論と実践の仕掛け
「最強の営業戦略 企業成長をドライブするマーケティング理論と実践の仕掛け」は、世界的な経営コンサルティング会社のA.T.カーニーが、営業力強化を目的に自らが参加してきたプロジェクトの経験をもとに書かれた本です。
著者の経験を通して、有効と実証された内容を「ものの見方・考え方の枠組み=フレームワーク」として体系的にまとめられています。
フレームワークを実際に営業活動で活用することで、営業力を飛躍的に強化できると述べています。
戦略の立案から営業への落とし込みまでが各ステップに沿って説明されているため、誰でもすぐに実践できる内容です。
著者 | 栗谷仁 |
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出版年 | 2009年 |
対象読者 |
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3.人を動かす
「人を動かす」は、人間関係の改善とコミュニケーションスキル向上について書かれています。
この本では、人を動かし影響力を持つための心理学的な原則や実践的なテクニックが紹介されています。相手の立場や感情に寄り添い、積極的な関心や誠実さを持って接することが重要とされており、具体的な実例やストーリーを交えて分かりやすく説明されています。
1936年の初版から80年以上にわたって多くの人に読まれている名著です。古い本ですが、時代に合わせて改定が重ねられているため、現代にもマッチした内容になっています。
著者 | デール・カーネギー |
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出版年 | 1936年 |
対象読者 |
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アウトソーシングを活用して営業モデルの構築を!
エンタープライズ営業は、ターゲット企業に合わせた営業戦略を立てることが重要です。
自社社員で立案から戦略、実践までを遂行するのは難しいケースもあるでしょう。
営業モデルの構築は、営業コンサルティングによって可能です。
たとえば、営業モデル構築及び新規開拓営業をアウトソーシングした場合、以下のような流れになります。
上記は、実際にエンタープライズ営業を成功に導くために必要な体制です。自社で準備ができない場合は、アウトソーシングを検討するのもよいでしょう。
まとめ
本記事では、エンタープライズ営業の特徴やKPI設定のポイントについてお伝えしてきました。
エンタープライズ営業には、ターゲットに合わせた戦略と長いリードタイムに柔軟に対応できる体制が必要といえるでしょう。
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